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ピロリ菌ではない、胃潰瘍・胃癌を起こす細菌、ハイルマニイ

 胃潰瘍、胃癌を起こす細菌として、ヘリコバクター・ピロリが有名です。わたしの祖母が数年前に80代で亡くなりましたが、40代から胃潰瘍や十二指腸潰瘍をくりかえし、胃も十二指腸も摘出し、最終的には大腸がんを繰り返しました。消化器外科の先生に、「もしかして祖母はピロリ菌感染で、40年間消化器の病気に悩んでいたのでは?」と尋ねたところ、摘出した大腸がんからピロリ菌が出てきたことを報告してくれました。

 現在では、ピロリ菌の検査も簡便で除菌も可能です。

 一方で、ピロリ菌ではない細菌によって胃潰瘍が起きている、という報告もあるのです。

 これらの胃疾患に関係しているとみられているのが、ピロリ菌ではないヘリコバクター、ヘリコバクター・ハイルマニイです。

 ピロリ菌陰性の胃疾患患者27人のおよそ半数がこの菌に感染していた、と今年の日本ヘリコバクター学会の全国調査で発表されました。

 実は、ハイルマニイの発見は意外と早く、オーストラリアのロイヤル・パース病院のウォーレンとマーシャルという2人の医師によって1984年にピロリ菌が発見された3年後の1987年、ドイツ人のハイルマンという医師が、上部消化管症状を持つ患者に内視鏡検査を実施したところ、0.25%の患者の胃粘膜組織中に「ピロリ菌ではない螺旋菌」が存在することを見つけました。このハイルマンの名前に由来し、ヘリコバクター・ハイルマニイと命名されています。

 ヘリコバクター属の細菌は、30種類以上が見つかっています。そして、近年では、ピロリ菌以外のヘリコバクター族で人に感染する細菌を、広義で“ハイルマニイ”と呼ぶようになっています。

 ハイルマニイにはピロリ菌と異なる特徴があります。

【ハイルマニイの特徴】
①ピロリ菌は、霊長類にしか通常感染しないが、ハイルマニイはイヌやネコなどにも感染する、人獣共通感染症
②大きさはピロリ菌より小さく、ピロリ菌がたった数μmであるのにたいして、ハイルマニイは20μmと10倍ほど大きい
③ピロリ菌は尿素分解酵素活性を持つ(ウレアーゼ活性)のに対し(これをつかって呼気でピロリ菌の同定検査ができる)、ハイルマニイではウレアーゼ活性が弱陽性もしくは陰性で、ほぼ検出されない
④最適な培養条件が見つかっておらず、大量培養が困難、
⑤ピロリ菌は粘液層にいるのに対し、ハイルマニイは胃腺腔深部や壁細胞内にも存在する
⑥ピロリ菌は片側にだけ鞭毛がある(しっぽのような構造)のに対し、ハイルマニイは両側に鞭毛が付いており移動速度が速い
⑦ピロリ菌は萎縮性胃炎などを引き起こすのに対し、ハイルマニイは萎縮性胃炎を引き起こさないという特徴を持つ
01fig1 (1)
左のハイルマニイのうちの一つは、細菌の両端に鞭毛があるのにたいし、右のピロリ菌は、一方にだけ鞭毛がある。

 マウスを用いた実験からは病原性や感染力が強いことも分かっています。ウレアーゼ活性が無いので、先ほどのべたようにピロリ菌検査では発見できませんから、もしかして、ピロリ菌陰性でも胃炎が続くひとは、ハイルマニイの感染なのかもしれません。


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